TOP > ポスト団塊ジュニア考 > あとがき 2015年。住宅不動産市場の課題

ポスト団塊ジュニア考

世代の定義について
あとがき 2015年。住宅不動産市場の課題
■ 見えてきたこと

調査結果から見えてきた、ポスト団塊ジュニアの実態は、一般的なネガティブなイメージとは違って、いたって真っ当な若者像であった。

彼らは仕事での成功を夢見ているし、努力することをいとわない。経済的な豊かさも諦めていない。豊かさは与件として重視するが、しかし、前の世代のように、豊かさが職業生活の目的にならない。

彼らは人付き合いを避けていない。それどころか、親しい人との関係を非常に大切にしている。結婚して家族と生きていくことを夢見ている。彼らは仕事第一で家族を犠牲にするようなことはしない。なぜなら、彼らの「自分らしさ」は、家族や友人・恋人など、親密な人たちとの関係性の中に見いだされているからである。特にY世代と言われる今の20代前半については、職業観、家族観、住まい観、情報行動のあり方など、生き方のすべてが親密な関係性の中にある、と言っても過言ではない状況が見えてきている。

我々の見立てでは、彼らは、過去のどの世代にもなかった新しい社会的スタイルを実現する可能性が高い。その新しいモードは、彼らが社会的な実績を積むにつれて-旧世代が社会の表舞台から消えるにつれて-、静かに/手応えのあるかたちで提示されることになるだろう。

■ マーケティングの限界

ポスト団塊ジュニア世代が市場の主役になる2015年。個人が置かれた関係性のコンテクストの中でなければ、その人の選択を理解することができない時代になる。住宅については、「家族の絆の象徴」「家族の思い出を刻むもの」という意見にみられるように、スペックでは語りきれない情緒的な価値観が強くなる。

関係性の中でなされる情緒的な消費においては、個々の判断・選択は関係性の文脈(=コンテクスト)に依存し、「客観的な正解」や「選択の論理的・合理的な根拠」はなくなる。この認識は大変重要であるので、特に強調しておきたい。

コトラー以来、One to OneであれCRMであれ、マーケティングは顧客(個客)の中にア・プリオリにあるニーズ、ウォンツにいかに対応するか、という理論あるいは技術の体系であった。しかし、対応すべきニーズ・ウォンツが親密な関係性の中で繰り返されるコミュニケーションの結果として生成されるものだとしたら、アンケート調査も含めて既存のマーケティングの諸手法はその限界に直面することになる。アンケート調査での回答やネットで入力する検索条件は、「とりあえず」以上のものでなくなる。事前の回答と最終的な選択結果の間に、関係性の文脈を共有しない第三者には理解しがたい飛躍が散見されるようになるはずである。

■ ポストモダンマーケティングの心構え

従来型のマーケティングによってカスタマーをコントロールしようとする試みは成功の望みがうすい。かといって、新しい時代に対応するマーケティングの実践的な手法は提示されていない。それを模索することが本レポートの目的ではないが、本研究を通じて確信するところを、簡単ではあるが記しておきたいと思う。

もはや、「標準」や「理想」のモデルも、「多様化した個性」ともいうべきものも、いずれもない。すべては関係性の中で恣意的に無根拠に選ばれていくという認識が、これからのマーケッターに求められる最も重要なパースペクティブである。これからのマーケティングの優劣は、一人一人、一家族一家族のカスタマーが頼る関係性の環の中に入れてもらえるかどうかによって測られ、それはカスタマーからの信頼の獲得度合いによって規定されると心得るべきだ。

その信頼を獲得するために我々ができることは、さしあたってそう多くない。「もし自分がカスタマーだったらどう感じるか」に心を砕く、そのような思考・態度がまず必要だろう。我々もまたカスタマーであるという事実を忘れないことだ。どのようなライフスタイルでも構わない。これが私の幸福な生活だと思う生活を追い求めてみることだ。そして、自分の思い描く幸福を認めるように、相手の思い描く幸福を認める。そこから始めるべきだと思う。

そうすれば、いかに細かくセグメンテーションされようとも、ステレオタイプな類型として自分を測られた場合の違和感や、自分のニーズ・ウォンツという感情の根拠の希薄さ、曖昧さや移ろいやすさが実感できるはずだ。そのようなカスタマーとしてのリアルな実感を持つことが、カスタマーとコミュニケーションを成立させるための、不可欠な作法となるだろう。

企業の中でマネジメントを担当する層においては、ポスト団塊ジュニアは10年後のカスタマーであると同時に、共に働く仲間であるという事実を忘れてはいけない。共に働く仲間として、1人1人の人間として、あなたにとっては理解不能かもしれない彼らに誠実に接することで、カスタマーに対する理解のヒントが得られるハズである。

2006年6月
リクルート住宅総合研究所 島原万丈

Acrobat Reader DownLoad
PDF書類をご覧になる場合は、Adobe Readerが必要です。
正しく表示されない場合、最新バージョンをご利用ください。
PAGE TOP