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ポスト団塊ジュニア考

世代の定義について
CHAPTER05. 住宅購入行動に対する考察
■ 持ち家志向

結婚年齢の上昇に伴い、取得年齢はやや上昇する可能性はあるが、ポスト団塊ジュニアの持ち家志向が低いとは言えない。これまでの世代と同レベルの持ち家希望率が確認されている。

ただし、一次取得の段階から一戸建ての希望がマンションよりも高く、マンション→一戸建てという住宅双六はすでに形骸化しているという認識すべきである。分譲一戸建て契約者の購入前の住居形態でも、民間賃貸住宅と寮社宅で7割を超え、持ち家マンションからの買い替えは1割程度に過ぎない。

■ 流動性

アンケートの結果を見る限りは、ポスト団塊ジュニアのエリア移動意向は上の世代と比べて、高からず低からずだが、しかし、流動性は低くなるだろう。その理由は、「親との近居希望」「友人との関係重視」のような生活価値観をふまえると、特に事情がない限り地元周辺に定住する要因があるからだ。

住宅に対する価値観でも、「家は家族の思い出を刻むもの」や「家族の思い出の詰まった家は何より価値がある」という価値観は強く、ステップアップではなく、変容・蓄積を志向する。

■ 住宅購入時の購入行動

アンケートでは、未来の購入を想定しての重視条件や購入行動を直接尋ねる質問は設定していないが、ポスト団塊ジュニアの家族観や住宅観のデータから単純に想定できることをまず列挙しておく。
・情報収集活動は積極的で、多くの情報が収集される
・ネット、リアル問わず、人メディア(周りの人、詳しい友人、経験者)からの情報が重視される
・住宅の資産性や機能性はこれまで通り重視される
・その上で、情緒的な価値がより重視される

何よりも家族を重視するポスト団塊ジュニアが家を買う理由は、家族が家族をする場を手に入れるためである。すでにみたように家族とはコミュニケーションによって宣言し、更新していく関係であり、住宅選びにもその意識が写し取られている。ここでは、住宅は家族の関係性を可視化する装置であることをまず考察の立脚点として確認しておく。

■ マイファミリーコンテクスト

情緒的な価値について補足が必要だろう。ここで情緒的価値と言っているのは、「家族の絆の象徴」「思い出を刻むもの」「家族の個性やライフスタイルを表現するもの」といった見方で表されている抽象的な概念であり、具体的なスペックや機能を特定しない。住宅不動産商品のどの部分が家族の絆を象徴するのか、思い出を刻むのか、個性を表現するのか、おそらくそれは一家族一家族の成り立ちや現在によって異なってくるような、曖昧で捕らえどころのない状況だろう。そのような概念をここでは、マイファミリーコンテクスト(家族の文脈)と呼ぶことにする。

具体的なスペックや機能を限定しない、ということは逆に言うと、マイファミリーコンテクストにフックさえすれば、家族が納得しさえすれば、「何でもアリ」とも考えられ、住宅商品選びは、そのスペックや機能を比較検討する行動ではなく、意味を読み解く行動となる。

その時、市場の住宅商品は、客観的な評価ではなく極めて個別の主観的評価がされることになり、そうなると、誰の目から見ても明らかなよい商品というものはなくなるだろう。資産性やスペックは必要条件であって十分条件ではない。替わって 「この家を選んだのは私達が住みたいと思ったからだ」としか言いようがないような選択が散見されるようになるだろう。

一家族一家族のコンテクストをいかに解読し、具体的な商品へいかに納得感高く翻訳するかが、マッチングのコア技術となるかもしれない。

■ 選択のランダム性、恣意性

さらに注意が必要なのは、その主観的評価が親密な関係性のコミュニケーション-の中で行われるということだ。そもそも正解のない選択(=主観・情緒による選択)を、相互肯定のコミュニケーション(=何でもあり)の中で評価・選択がされるのである。マーケティングが発信する商品情報(=広告)もまた、一人一人がそれぞれ各自のネットワーク(≒ネタもと、相談先)を持った家族によるコミュニケーションの中に放り込まれて、選別され、吟味される。

この様相は、多様化(=細分化された一定の傾向)とはまったく異なる次元の、あえて言えば「ランダムさ」、言い換えればデタラメさ、無根拠さ、恣意性、そういう類のものである。マーケティングはカスタマーを制御できない、答えは予測不能という認識を持つべきである。

総需要の減少という危機感を背景に、住宅不動産業界が本格的にマーケティングに取り組み始めるころには、皮肉にもカスタマーはマーケティングの手の届かない先へ行ってしまっているのである。

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